次から次へと手に取られていた。

「ここも忙しくなって、一つ一つの作業に時間がかかりすぎる。かと言ってスタッフを増やせば狭くなり動きにくくなる。それにあらかじめ袋に入っていれば買い求めやすいし、会計も楽だ。ちょっとした手土産に使えるんだそうだ。貴族の手土産のような立派な箱に入れる必要はないから、今の売れ筋はあのラッピングにしてあるシリーズだな」


 庶民街にも隣国からのお客さんが多い。人の流れが変わってきたようだ。

「誰かの意見を取り入れたの?」

「売上の様子を見ていて、あの子達やパティシエに相談したら、やってみようと言う話になり実験してみたら、当たったって所だな。あと平民には貴族とは違った習わしとかあるからそれに応じたものもセットで販売したら予約殺到になった」


 腕を組み店を俯瞰しているお兄様を横目から見ると楽しそうだった。私もお店を見ているとみんな忙しいながらに楽しそうに働いている。

「みんないい顔してる……」

「それはお前がスタッフ教育を一緒に受けて店を作ったからだ。元気に明るくをモットーにしているんだろう? このままいけば支店も視野に入れなくては追いつかない」

「広い場所に移った方が良いんじゃないの?」

 探せば大きい空き店舗がありそうなのに。なぜ敢えて支店を? このお店はどちらかと言うと狭い。


「それはしたくない。ここはお前が作った店でみんなこの店で働く為に頑張っている。昨日言っていたパティシエだがパティシエールを採用しようと思っている。女性ならではの感性を取り入れて、新たな菓子を作って出していきたい」

 思ったより庶民街の店もちゃんとしてくれているし、より良くなるために考えてくれている。



「ねぇ、お兄様?」

「うん? なんだ」

「私、帰って来なくても大丈夫そうね」

「……どう言う意味で?」