「なんだ、そんなことか……ルーナの好きなようにしても良い。留学する時に言ったはずだぞ? 難しく考える必要はない、と。それと店は任せてくれるのなら引き続きやりたい事をさせてもらうだけだ」

「良いの?」


「あぁ、構わないぞ。今日帰ってきて意外と隣国と近いと感じたはずだ。何かあればすぐに帰って来られるだろう?」

「うん」

「こっちのことは気にせずにお前のやりたい事をすれば良い。店の経営だけが経営学ではない」

「なんのこと?」

「店の経営・領地の経営・経営をするにあたっては人材の確保・働き方改革……など色々あるだろう?」

「はい、そう習いました」

「母上は事業もしているが、領地経営も手伝っている。屋敷の管理も母の仕事、茶会をするとなれば仕切らなくてはならないし多忙な方だ。それでも楽しそうだろう? 父上も忙しいが領地経営をして事業もしている。もちろん父上だけでは回らないから信頼できる人間を雇っているだろう? それは人望だよな? だからお前に言いたい事は中途半端な事はするな。お前にはお前の道があるんだって事だ」

「よく分からないけど、分かったような気がする」

 両親を見て育ったからわかるだろ? って事よね。


「その顔は分かっていないな。信頼できる相手を選べって事だ。ぐずぐずしていると幸せを逃すかもしれんぞ。ついでに言うと、ジョゼフ殿は結婚することになった。そして生まれてきた子がジョゼフ殿の両親(侯爵)の養子になる。やつは王都に出てくることはまずないだろう。出てきても恥ずかしい思いをすることになるからな……お前と別れてから大量の塩が侯爵家に送られてきたそうだぞ……くっくっくっ。あー腹が痛い。笑いすぎだな……」

 お兄様、最後の方はずっと笑っていたわね。ジョゼフに悪霊が取り憑いていたと言う話は聞いたけど……


「奥方になる方は、少々歳がいっているが多産家系だそうだ。それに塩には一生困らない。と言っていたらしいから逞しい人柄であることが分かる。元夫も結婚するんだからお前も好きにして良いぞ。一生独身でいることは全くない」


 ……ジョゼフが結婚。アグネス以外の人と。そっか。肩の力がストンと下りた気がした。