「侯爵様、わたくし実家では仕事をしておりましたので、結婚後も続けたいと思っております。もちろんよろしいですわよね?」

 プライベートは口を出さない……約束だ。それに仕事なんだから悪いわけがない。


「あぁ、もちろん許可する」


「ありがとうございます。それでは実家から数人わたくしの使用人を呼びたいと思っていますのでよろしくお願いしますわね」

「もちろん、許可するよ。それよりも私たちの契約について今一度話し合いたいと思っているんだが、時間はいいかな?」


 ルーナを抱きたいし、以前の様に名前で呼ばれたい。侯爵様と言われると寂しい。
 ルーナもさっき使用人に名前で呼んでほしいと言っていたから、それを真似しようか……


「契約ですか? 一年更新となっておりますので、見直しは一年後となっておりますわ」



 なんだ……それ? 聞いていない。



「一年更新……?」


「えぇ。書類にそう書いておきましたの。顧問弁護士に相談して作成し直しましたので法律的には有効ですわよ? 侯爵様も例の書類を作る際には顧問弁護士からの助言を受けたのではなくて?」

「……そうか、一年更新」


 書いてあったか? あの括弧の部分だけ書き換えられたと思っていた。

 嘘だろ……ルーナが考えてルーナにサインする様に……


 ……ルーナが考えて顧問弁護士に相談して作成してサインをしたのか! やられた!



「お話は以上ですわ、わたくしはお先に失礼致しますわね。それと食事は別で構いませんので、お好きな時にお召し上がりください」