「……すみませんでした。足を踏んでしまいました」
「いえ、私も練習が足りなかったようです」
ルーナにも不得意なものがあったと思ったら妙に可愛いく思えた。足を踏んだと言ってもルーナは軽いから全く問題がない。
「何か飲みましょうか? 疲れたでしょう」
「はい」
今日のルーナの美しさに男子生徒達は見惚れていた。いつも美しいのだがドレスアップすると急に大人びて神々しくて困ったものだ。
……学園の舞踏会は最低でも三人の相手と踊らなくてはいけない決まりだ。モヤモヤする。男達はルーナを誘いたくてうずうずしているようだった。
果実水を渡すとこくこく口に入れるその姿がまた可愛い……
「フォンターナ卿、まさか貴方がルーナ嬢のパートナーだったとは!」
第三王子の登場だ。面倒だ……
「お久しぶりです殿下。えぇルーナ嬢から舞踏会があると聞きましてパートナーを務めさせて貰っております」
そう言って礼をした。殿下のパートナーは伯爵家の令嬢だった。
「ルーナ嬢、踊って頂けませんか?」
まぁ、そうなるよな……
「えぇ喜んで」
思いっきり足を踏めば良い……そう思った。殿下とルーナを見ていると美男美女とはこういうことを言うのだろうか。歳も見合っているし……ダメだ。変な事は考えないでおこう。
そして一曲終えたはずなのにルーナの手を離さない殿下にやんわりと声をかけに行く。
「殿下、貴方と踊りたい令嬢がお待ちですよ」
「くそ、二回目を踊ろうと思ったがバレたか……ルーナ嬢楽しかったよ。また踊ろうね」