「……スージー?」
「そりゃ侍女だろうが。留学先について行くだろうな」

「……フェルナンド?」
「悪くないが、あいつも忙しい」

「……難しいわ。やっぱり留学は、」
「おい、大事な存在を忘れてねぇか?」

「お兄様? 誰のこと」
「そのお兄サマだよ。お前が留学に行っている間は代わりに見てやるよ」


「お兄様が? 嘘でしょう?」
「しばらく働かなくても俺は株で儲けている。しばらくのんびりと王都で過ごす事にした。王太子も煩いからたまには顔を見せに行くと約束しちまったからな」


「良いの?」
「そこは良いの? じゃなくて出来るのか? って聞くところじゃないのか?」

 やれやれと言った感じでお兄様は自分の腰に手を当て、私の頭をぐしゃっと撫でた。



「もうっ。お兄様は出来ると思うもの。帳簿も一目見ただけで指摘出来るくらいだから」

「数字は得意だからな。ただ菓子店の経営となると話は別だ。お前のこだわりと店のコンセプトや今後の展開など事業計画を纏めてくれ。それに応じて動く事にする。任せてみる気はないか?」

 ニヤリと笑うアルベーヌ。


 お兄様だったら任せても良いのかもしれない。知らない人よりマシよね。

「なんだその胡散臭い顔は? お前は経営をするにあたってまだ半人前なんだから学んでこい! それと外の空気でも吸って年頃の娘らしく学生生活を楽しんでこい。期間は一年、行ってこい!」


 ぶっきらぼうな言い方だけど、優しいのね、お兄様。お父様とお母様の経営を昔から手伝っているものね。経営者代理ができるなんて凄い。


「ふふっ、お言葉に甘えますわ。お店をつぶしたらお兄様のこと許しませんよ!」


「言うじゃねぇか、任せておけ」