夫人は耐えられなくなりハンカチで目元を押さえていた。アルベーヌ殿は何を考えているのかさっぱり分からないがそんな両親を見て、お客さまの前だよ。と夫人を宥めていた。

 ……胸が痛んだ。


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「すまない。私が何か余計なことを言ったのだろうか!」

 すかさずハンカチを渡した。受け取ってくれ、ホッと胸を撫で下ろした。

 情けないがオロオロしてしまう。気の利いた事も言えないとは!


「いえ……嬉しくて。ごめんなさい。そんなことを面と向かって言われた事がなかったものですから……仕事をするに当たって私はまだまだ半人前です。それなのに嬉しい言葉をかけて頂いて本当に嬉しかったのです」


 悲しませたわけではなかった……女の子と言うものは分からない。嬉しくても涙が出るのか。そうか知らなかった。


「本当のことを言っただけです。それにルーナ嬢がお菓子の説明をする時は必ず良い顔をしている。その説明を聞くと食べなくては損するような気がしてならなくて。説明がちゃんと出来ると言う事は自信があるからなんだろうと私は思うんだ」

 鼻を啜る音が聞こえた……


「お茶を飲んだらどうかな? 少しは落ち着くと思う」


「はい……」


 お茶を口にしてしばらく無言のルーナ。落ち着くまで待とうと、少し外の様子を見せてもらった。伯爵家の庭は手入れがされていて明るいイメージだ。



「あ、あの……」

 ルーナが何かを言いたそうなので振り向くと顔を真っ赤にさせて

「すみませんでした……ご迷惑をおかけしてしまいました。ハンカチまでお借りしてしまって……洗って必ずお返しします」