このプリンは卵にこだわった極みプリン。卵を産む鶏のエサにもこだわっているから、お菓子を作るにはうってつけ! しかも何回も何回も試作を重ねてようやく完成して王太子妃様にも紹介しようと思っていた、渾身のプリンなの!


「へぇ。美味しそうだね、それでは早速いただこうかな」

 フォンターナ卿がプリンを口にした。大きな男の人がプリンを食べる姿ってなんだか、微笑ましいわね。あっ。もう一口食べた。美味しそうに食べてくれると用意した甲斐があるわね。

「……そんなに見つめられたら食べにくいんだが」

「え、やだ。申し訳ありませんでした。つい癖で、美味しいのかどうなのかと気になってしまいました」

 だめね! 不躾に人をジロジロ見るなんて。

「とても美味しい。これは販売するの? 毎日でも食べたいくらいだよ」


 販売か……これは難しい問題だ。持ち帰る術がないもの。出すとしたら貴族街にあるカフェスペースかな。


「まだ未定です。販売するには容器や温度の問題が出てくるので、お出しするとしたらイートインスペースがある貴族街のカフェになると思います」


「そうか……決まったら教えてほしい。通うことになりそうだね」

 そんなに気に入ってくれたんだ! 嬉しいわね。あっ、大事なことを忘れるところだった……


「フォンターナ卿、先日は危ないところを助けていただきありがとうございました。お礼申し上げます」

 席を立ち頭を下げた。あの時助けに来てくれないと今頃どうなっていたか……前侯爵の弟の息子と? ヤダヤダ! 考えたくないよぉ。気持ち悪い。鳥肌が立ってきた。