「……なるほど。そう言う事か。フォンターナ卿に正式に礼をしなくてはならない。父上にはその旨話しておく」

 わぁ。お兄様が怒っているわ。エミリオ様、もといフォンターナ卿は、お兄様に心配を掛けていたのなら先に説明した方がいい。と言って席を外してくれた。


 それからお兄様とフォンターナ卿の元へ行った。フェルナンドはお互いを知っているため紹介役をかってくれて、自己紹介してお礼を言った。お兄様は腰を深く折り挨拶していた。


「ルーナ、卿と話があるようだがこんな事があったんだから今日は家に帰ろうか。申し訳ありませんが後日お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

 お兄様って口も態度も悪いけれど、ちゃんとした挨拶も出来るのね……


「礼は結構だよ。令嬢が助けを求めていれば手を差しのべるのは当然だ。それにルーナ嬢の事は知っているから間に合って良かったとさえ思っているよ」

 にこりと笑みを浮かべるフォンターナ卿。

「いえ、そう言うわけにはいきません。ルーナそうだよな?」

 ……フォンターナ卿は隣国の公爵家の方。失礼があってはいけないものね。


「はい。フォンターナ卿、本日はありがとうございました。もしよろしかったら我が家でお茶を飲みませんか? 美味しいお菓子を用意させて下さい!」

 すると、はははっ……とフォンターナ卿が笑い出した。あれ何か失礼な事を……

「美味しいお菓子を用意してくれるのなら行かなくては失礼だな。礼は不要だがせっかくのお誘いだ。寄らせてもらうよ」

 ほっとした。お兄様もふぅ。と息を吐いている。フォンターナ卿のようなすごい人と庶民の街で偶然あったりするなんて思わないもん。それに鉄道ってあの鉄道でしょう? みんな開通を心待ちにしているあのすごい乗り物!