素直に応じた。足に力が入らない。無様に転ぶ事があってはならないもの。

 衛兵……今頃戻ってきた。


******


「おい、フェルナンド、ルーナを見なかったか?」

 化粧室から中々戻ってこないルーナを心配し会場を見渡したところでフェルナンドに会った。

「え? ルーナ? 見てないけど、どうしたの?」

 婚約者といちゃついてやがったフェルナンドは驚きの表情で周りを見る。ルーナのプラチナブロンドは目立つ。


「化粧室に行ってから戻ってこないんだ。もう半刻も経つんだ!」

「半刻って、そんなに? アル! 何してたんだよ!」


「……囲まれていた」


 なんとなく想像はつくだろうけれど、ルーナが美少女という事はその兄のアルベーヌも黙っていればイケメンである。
 たまにパーティーに参加すると令嬢に囲まれてしまうのが悩みでパーティーは苦手。


「そうなるよね……化粧室か、シルビア悪いけど化粧室を探してくれる?」


「ハイ、行ってきま、あっ!」


 シルビアが化粧室に向かおうとした時だった。



「「なんだ?」」



 シルビアの視線の先でルーナが男にエスコートされてこちらに向かってきていた。




「あれ? エミリオ様?」

「知り合いか!」

「そりゃ知っているよ。エミリオ・フォンターナ。僕らの国の公爵家嫡男で、貿易と鉄道会社をしていて、今度鉄道が国境を越えて便利になるだろう? 国同士の架け橋的な存在なんだよ」


「……あぁ、なんでルーナと」

「話を聞こうよ」

「そうだな……」


ルーナは見ず知らずの男にエスコートされるような令嬢ではない。知り合いなのか? そうするとこちらにきたルーナが申し訳なさそうに言った。


「お兄様……ごめんなさい遅くなってしまって」