精一杯の強がりだった···───。

本当は泣いて沙苗ちゃんをひっぱたいてやりたかった。

だけど、あの場で私が泣いてしまったら
負けを認めて沙苗ちゃんに優越感を与えるだけだ。

そんなの私のプライドが許さない。

あんな小娘に馬鹿にされて蔑まれるなんて
ごめんだわ。


それに私が持っていたのは、快斗だけじゃない。

今まで頑張って積み重ねてきた
仕事の実績だってちゃんとある。

それを見ていて認めてくれている人も
必要としてくれる人も、少なからずいるのだ。

私は廊下をカツカツと突き進んでいると
用事を済ませたのか部署に戻る途中の朝比奈君の後ろ姿を見つけて足を速めた。

「朝比奈君ッ」

私の呼びかけに朝比奈君はゆっくりと振り向いた。

「秋月先輩...」

朝比奈君は驚いたように目を丸くしてるが、
私はお構いなしに朝比奈君の手首を掴むと
近くの給湯室に押し込んだ。