「いや、別に好きじゃありませんけど。普通に政略結婚――――婚約しているだけですし」


 どうしてわたしの気持ちを勝手に決めつけるのだろう? 面倒だし、鬱陶しいし、色々と嫌になってくる。


「そんな……ひどい。殿下が可哀想だわ! こんな冷たい人が婚約者だなんて……私が殿下の婚約者なら、もっと殿下のことを気にかけますのに」

(どうぞどうぞ。さっさと婚約すればいいと思ってますけど)


 えぐえぐと涙を流すカトレアを見ていたら、段々イライラが募ってきた。
 だけど、男ってこういう女がタイプなのよね。だからこそ、参考にしろ、プレーしろって勧められたわけだし。


(無理だわ)


 わたしとは相容れない。The・女子って感じ。昔からそういうタイプは苦手だったけど、この子は別格かも。


「カトレア!」


 とそのとき、どこからともなく殿下の声が聞こえてきた。

 なるほどね。悪役令嬢っていうのはこういう感じで形作られていくものらしい。この状況を見たら、誰だってわたしが悪いと思うもん。さすが、ヒロイン様って感じ。