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「先ほどはすまなかった、マチルダ。不快な思いをさせただろう?」


 教室で授業がはじまるのを待っていたら、ヴァージル殿下はわたしに謝ってきた。


(悪いと思うなら最初からするなよ)


 わたしは深々とため息を吐きつつ、ヴァージル殿下をちらりと見遣る。


「さっきの令嬢は? 同じクラスじゃないんですか?」

「え? ……ああ。彼女は隣のクラスらしい。もっと成績が良ければ、と残念がっていたよ」

「……そういえば、そんな話でしたね」


 この学園のクラス分けは成績順になっている。ヒロインはもともと中の中ぐらいの成績で。そこからヴァージルのために努力して、最終的には同じクラスに上がれるっていう話の流れだった。


(まあ、努力家なのは結構だけど)


 性格がほわほわしているうえ、知識までないんじゃ、妃なんてとても務まらないだろうしね。


「――――怒っていないのか?」

「怒る?」


 わたしの反応が意外だったらしい。バージル殿下は首を傾げつつ、そんなことを尋ねてくる。