「あっ、いえ! それで、殿下に勉強を教えていただけないかなぁって思ってまして……」

「僕に? どうして?」


 ヴァージル殿下は心底不思議そうな表情で、首を大きく横に傾げる。
 その瞬間、カトレアは真っ赤に頬を染め、眉間にグッと皺を寄せた。


「え? ……え? だけど、その……」

「僕は試験では次席だったし、公務や鍛錬、自分自身の勉強で忙しい。頼むべき人間は他にいくらでもいるだろう?」

「そんな……! だけど、ゲームでは……」


 どうやらカトレアはわたしと同じ――――転生者らしい。そういえば、ゲームの中でカトレアがヴァージル殿下に勉強を教えてもらうっていう場面があった気がする。


「そういうわけだから、僕たちはこれで。行こう、マチルダ」

「え? だけど……」


 あんな状態のあの子を放って置いて良いのだろうか? 傷ついてるっぽいし、もう少しフォローとかしたほうが良い気がする。っていうか、このままじゃ疎遠になる気がするんだけど。