(なんて返せば良いんだろう?)


 正解がちっとも分からない。
 逃げ出してしまいたい――――そんなふうに思ったそのときだった。


「殿下! ヴァージル殿下!」


 カトレアの声だ――――と思ったのも束の間、彼女はニコニコと微笑みつつ、わたしと殿下の間に割って入る。


「試験の結果、拝見しました! 本当に素晴らしい成績ですわ!」


 ニコニコと愛らしい笑みを浮かべつつ、カトレアは殿下の腕に抱きついた。


「ありがとう、カトレア。けれど、試験の成績は僕よりもマチルダのほうが上だ。先に彼女を褒め称えるべきだろう?」

「えぇ……マチルダ様を?」


 カトレアはとても不機嫌な表情で、わたしの方を振り向いた。そんな顔すんなよ、と諭したくなるような嫌な顔だ。まあ、殿下には見えてないし、別にいいんだけど。


「あの、殿下! わたくし来年は殿下と同じクラスになりたくて……それで、今から勉強を頑張ろうと思っているのです」

「そうか……それは良いことだな」


 ヴァージル殿下はカトレアの腕を退けながら、ニコリと快活な笑みを浮かべる。