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「優秀だとは聞いていたけど、マチルダは本当に頭がいいんだね」


 それは初めての定期テストのこと。校内に貼り出された成績表を前に、ヴァージル殿下が青ざめた表情でそう言った。


(まずったなぁ……もう少しミスするべきだったのか)


 王族は皆の手本となるべき存在だ。何事につけても、常に一番を求められている。
 それなのに、わたしは次点の殿下に大きく差をつけ、今回のトップをとってしまった。
 王家の面目丸つぶれ――――とはいえ、手加減だとかそういうことを考えるのは失礼だとも思う。


「すみません。こんなつもりじゃなかったんですが」


 前世でも言われたことだけど、自分よりも頭がいい女っていうのは目障りなものらしい。ツンツンしていてとっつきづらいとか、能力を鼻にかけているとか、散々嫌味を言われたもの。


「なにを言う! 本当に素晴らしい成績だ! あの難しい試験をここまで……本当に、感動している」

「は、はあ……」


 それは想像していたのと全く違った反応だった。ヴァージル殿下は瞳をキラキラと輝かせ、わたしの手を握ってくる。彼の努力の結晶――――ゴツゴツと硬い剣ダコに、思わずウッと息を呑んだ。