「なにが納得できないんです?」

「なにって、当然殿下のことです! どうしてあんなふうになってしまいましたの?」

「あんなふうって?」

「少し前まで『僕が王太子でいいんだろうか?』とか、『自信がない』だなんて仰ってたのに、急にあんなに元気になられて。身体だって、以前よりも逞しくなられていますし……わたくしは細身の男性がタイプなのに」


 なるほど、殿下が裏庭に来なくなったことが気に食わないらしい。わたしは静かにため息を吐いた。


「別に――――悩みから解放されたなら、良いことだと思いますけど。
っていうか、ヴァージル殿下は貴女を信頼して悩みを打ち明けてくれたのでしょう? それを勝手に他人に話すのは如何なものかと思います」


 殿下としては他人に――――特にわたしには弱みを見せたくないんだろうし。そもそも、王族にはメンツってものがあるというのに。


「なっ……そんな、だけど!」


 どうやら言い返す言葉が見つからないらしい。わたしはさらにため息を吐いた。