「本当に、好みじゃないっていうだけです」


 わたしは単に、もっと逞しいタイプが好きってだけ。余裕があって、包容力がありそうな、大人の男性のほうが見ていて安心する。
 ちらりと護衛騎士の方を見遣ったら、殿下は大きく目を見開いた。


「そうか! マチルダはディランみたいな男が好みなんだな?」

「は? ……まあ、どちらかといえば」


 っていうかその人、ディランって名前なんだ。あんまり興味はないんだけど、取り敢えず適当に相槌を打つ。


「分かった。鋭意努力しよう」

「は?」


 訳のわからないことを言い残し、殿下は教室からいなくなった。