それは割といつも通り、蒼永の家でみんなで食卓を囲っている時のことだった。
「はぁーー……」
何だか知らないけど、ママの溜息が多い。
いつもは誰よりも早くビール缶空けてるのに、今日は一滴も飲んでない。
「どうしたのママ?」
「実は仕事でちょっとトラブって……」
ママはファッション雑誌の編集長。
今度撮影があるんだけど、撮影予定だった男性モデルが撮影キャンセルとなったらしい。
「まさかのスケジュールミスでね…今代役探してるけど、彼と同じくらい話題性ある子は捕まらなくて……」
「大変だねぇ」
「この際アイドル級のイケメンなら誰でも……あ。」
「?」
急にママは何か思いついたらしく、顔を上げる。
「蒼永くん!!モデルやらない!?」
「えっ」
蒼永がモデル!?
「蒼永くんならいけるわ!!女子モデルメインで何枚か撮影するだけだから!!」
「いや、でも……」
「お願い!!バイト代出すから!!
撮影場所の近くにある美味しい中華も奢るわ!
咲玖もおいで!」
えっ、私もいいの?
ちょっと気になるし中華食べたいんだけど。
「蒼永〜、ママもこう言ってるし中華食べようよ」
「……、わかった」