「どうしたの…?」

「どうもしてない」

「してるよ。私、なんかした?」

「してない」

絶対に、どうもしてなくない。
一緒に帰ろうって誘ってきたのは真翔なんだから、私に怒ってるわけでは無いと思うけど、こんな風な真翔は初めてだった。

「真翔?」

真翔はまた歩き出して、スタスタと階段を下っていく。
私も置いていかれないようについていく。

上靴を履き替えて、運動場を突っ切って校門を出たところで、真翔はやっと止まってくれた。

「まつり」

「ねぇ…どうしたの…」

「あのさ、応援合戦のことだけど」

「うん。何か嫌なことあった?」

「違くて」

「うん?」

「橋本に骨組みのことで連絡することとかあったらさ、俺に言えよ。俺から橋本に言うから。他にも男子に何かある時は俺が連絡するよ」

「あ、ありがとう。私が男子に連絡するの怖いと思ってるって心配してくれたんだね!」

「え…いや…」

「だいじょうぶだよ。後で連絡先もちゃんと聞いておくし!用事がある時は自分でするよ」

「いいから。まつりは女子のグループとか、高嶋さんのダンスの進行とかを手伝ってあげてよ。千葉さんの作業も結構細かくて大変だと思うしさ」

「それはもちろん。ていうか、男女で分かれるとかじゃなくて、みんなで!やるんでしょ!チームだって男女混合なんだから」

「それは分かってる!そうじゃなくて…だから、個人的な連絡は俺が…」

「何で…?」

「何でって…あーもう!」

真翔が私の両肩を掴んで、目をはっきりと見てくる。
真剣な目。逸らせない。

「分かれよ」

「真翔…?」