放課後。

「九条さん」

「進藤さん!」

「明日から忙しくなるね」

「うん。私、早速段ボールとか…」

「今日はいいじゃん!本番までゆっくり出来なくなるんだし、今日はしっかり休もうよ。私もちょっと用事あるしさ」

「でも…みんなが…」

「みんなー!」

進藤さんがクラス中に聞こえるように大きな声を出した。

みんなが一斉にこっちを見る。

「応援合戦の準備は明日からね!今日は自由に遊べる最後だと思って、ゆっくりすることー!」

進藤さんの声に、みんながワッと賛同する。

「えー、じゃあ決起集会しようよー!」

「なんだよそれ」

「カラオケ、カラオケー」

気付いたら、教室の中は「いつものグループ」の中に、応援合戦のチームの輪が出来ていた。

すごい。
もうみんなの気持ちは動き始めているんだ。

「進藤さん、凄いね。たった一言でみんなを動かせるなんて」

「何言ってんの。この状況を作ったのは九条さんでしょ」

「私…が…」

「そうだよ。じゃあ、あなた達もちゃんと休むのよ」

進藤さんは私と、真翔のほうを見て、手を振って教室を出て行った。

「真翔」

「まつり、もう帰る?だったら一緒に帰ろ」

「え、あ…うん。いいけど、友達は大丈夫なの?みんな遊びに行くみたいだし」

「いいから」

真翔は鞄を持って立ち上がって、さっさと廊下に出ていってしまった。

「待ってよ…!」

真翔の背中を追う。

今日の真翔は早歩きだ。
足の長さが違う。歩幅が大きい。

「待ってってば…!」

真翔の腕を掴んだ。
振り向いた真翔は、なんでかちょっと不機嫌そうだった。