「今日は体育祭の応援合戦について決めていきます」

七月五日。
学活の時間だった。

十八日には終業式を迎えて、夏休みに入る。

私はまだ、教室に居る間は真翔に貰ったパーカーを着ていた。
教室は冷房が効き過ぎていて、むしろちょうど良かった。

うちの高校は夏休み明けの九月の第二土曜日が体育祭と決まっている。
体育祭のメインは各クラスの応援合戦だった。

優勝クラスには学校から賞金も出て、その賞金を使ってクラスでバーベキューをしたり、ちょっとした打ち上げをしたりする。

この応援合戦は強制じゃなくて、参加するかどうかはクラスごとに決めることが出来る。
毎年全校で五クラスくらいが参加した。

参加クラスが少ないのは、夏休み前から体育祭本番までの時間が短いからだ。
参加しようと思ったら、夏休みもクラスで集まって練習をする必要がある。

クラス全体の意志が同じであること、結束力が求められる。
三年生にもなると、受験生だし、夏休みは特に勝負の時になるから、リスクが高くてほとんど参加しない。
だから応援合戦に参加しようと思ったら、二年生までがほぼラストチャンスだった。

「えーっと、じゃあまずは参加についてですが…」

学級委員長の女子が進行する。
黒板には「応援合戦について」と書かれた大きい文字。

「はい」

「え…ええっと、九条さん…?」

私は迷いなく、右手をスッと挙げた。
みんなが一斉に私を見た。

迷いは無かった。
私はずっと、応援合戦に参加して、その実行委員に立候補しようって、もうずっと決心していたから。