「誰も私なんかと友達になりたくない、喋っても面白いことなんて言えないし、みんなだってつまんないだろうなって、私は勝手にみんなのことを決めつけてました。なのに、そんな私を見かねて声をかけてくれた人も居ました。一人ぼっちだったから…あぁ、一人ぼっちって、自分でそうなったんだけど…だから、余計に依存してしまって」

「小高くんだよね?」

「そうでしょ」

「へぇー」

「だから、みんなに対してそういう態度を取ってるくせに、特定の誰かにだけ“いい態度”を取るのは、面白くないと思う。不愉快だと思う…。私がなんでこんなにも人と関わることが怖いのか、心を開けなかったのか、最初から声に出して話が出来ていれば違ったのかなって」

「だからー、九条さん、結局どういうこと?」

「寂しいですって話?」

教室がまた騒がしくなってきた。

十分。
そうだ、私には十分しか時間が無い。

もう怯えてる場合じゃない。

「私は!私は、秘密を抱えてます」

パーカーを脱いだ。
手が震えてる。

それでもやるしかない。

露になった腕を上げて、みんなに見えるようにした。

ワッと一気に声が上がって、みんながそれぞれに何かを言葉にしたから、もうあんまり聞き取れなかった。

クラスの大半が困惑してるってことだけが分かった。

「九条さん…」

先生が私に近寄って、教卓に置いたパーカーをまた着せてくれようとしたから、首を振って断った。