まだドキドキしてる。

うまく話せるか分からない。
挨拶すらまともに交わしたことの無い人達の前で。

「九条さん、とりあえず席に着いて。あなた達もよ。話は後で…」

「先生。お願いします。十分時間をください」

「何を言ってるの?授業の時間はあなただけの物じゃないのよ。朝礼にも居なくて、そんな勝手なこと、許可出来ません」

「お願いします。先生への話は後でちゃんとします。罰も受けます。でも今じゃなきゃ…みんなにはもう話せない…。今しかないんです。私がこれからも学校で生きていく為には…今しか…」

「生きていくって…」

教室がザワザワとし始める。

「あんな喋ってる九条さん初めてみた」

「どうしたのー」

「何?」

困惑してる人、面白がって見てる人。
反応は様々だけど、みんなが私を見てる。

「私達は…」

私の後ろで気まずそうに立っていた女子達の背中を、武田さんが押した。

「とりあえず座ろう」

真翔も頷いて、私以外の五人が自分の席に戻った。

私と先生だけが教卓前に残されて、先生はみんなに静かに!って言った。

「先生ー、時間あげなよ。十分くらい、みんなもいいよね?なんか深刻っぽいし」

言ってくれたのは進藤さんだった。

心臓のドキドキがスッと治っていく。

真翔のほうを見たら、気付けるかどうか怪しいくらい、小さくコクンって頷いてくれた。

「…分かったわ。九条さん、あなたに十分時間をあげます」

「先生…、みんなもありがとうございます」