「九条」

「うん…?」

「ごめん」

武田さんが頭を下げる。

「りいさ?」

その姿には真翔も驚いている。
女子達も黙って見ていた。

「私の弱さを、真翔が居なくなることの怖さをあんたで解消しようとした。そんなことしても真翔の一番にはなれないのに。今更謝ったって虫がいいことは分かってる。この子達を責める権利は私には無い。こんなことさせた責任は私にもある。私は、これからもあんたと友達になれるかは分かんないよ。やっぱり真翔が大事だから。でもあんたの願いは叶える」

「願い…?」

武田さんは呆れた顔をして溜息をついた。
嫌な感じはしなかった。

「自分が言ったくせに忘れたの?自分の事情だけで嫌なこと言ったりしないよ。そんなことしても真翔の気持ちは動かない。生産性は無い。それで、あんたの願いは一個、叶うでしょ?」

真翔がちょっと笑った。
嬉しそうな声。

「ありがとう…武田さん…」

「あんた達は…?」

「…」

「本当に九条のリスカのこととかバラすなら好きにすればいい。でも自分が苦しい時、死にたくなった時、今日のことを思えばきっと後悔する」

「そんなこと…」