「りいさ…」

「あんた達、何やってたの」

「私達は!りいさの為に…!」

「私の為?」

「そうだよ!九条のことずっと目障りだったでしょ!?りいさの大事な場所を奪おうとするんだもん。だから消えればいいと思って…!そうだ、こいつリスカやってんだよ!りいさも見たでしょ?みんなが知ればもう仲間になんて…!」

「うるさい」

興奮して喋る女子に、武田さんが低く冷たい声で言った。

「りいさ…?」

「ちょうどいいや。真翔」

「うん?」

「私さ、あんたのこと本当に好きだよ。真翔が私を救ってくれた日からずっと」

「救ってくれた…?」

思わず声にした私の言葉を、武田さんは気にも止めなかった。

「真翔はずっと私の心の支えだった。特別だった。真翔もそうだって思ってた。九条が現れてから、それは違ったんだって知った。私の思い込みだった。人の感情をずっと縛りつけるなんて出来っこ無いのにさ、真翔はずっと私だけのヒーローで居てくれるって思いたかったんだよ。なんで真翔が突然出てきた九条にばっかり構うのか分からなかった。だから壊したかった。この子達と同じだよ。九条が消えればいいと思ってた」

「武田さん…」

「だから嫌なこともいっぱい言った。存在を認めたくなくて無視もした。でも分かったよ。真翔には九条の苦しさがずっと見えてたんだね。真翔と同じだったんだ」

武田さんが私の目の前に立って、腕を上げた。
殴られる…!咄嗟に思った私はまた強く目を瞑って俯いた。

「殴んないよ」

武田さんが小さい声で言った。
その声が他の人達にも聞こえていたかは分からない。

「え…」

武田さんは上げた腕を伸ばして、「裏返ってるよ」って、パーカーのフードを直してくれた。

「あり…がと…」