鼻で笑うように言った女子の言葉。

腕に突き立てた自分の爪が、リスカの痕に食い込む。
血は出ない。

もうかさぶたでも無い傷は、血も流してくれない。

「何がいけないの!!!」

「はぁー?」

「こわー。発狂ですか?」

「あーあ。キレちゃった感じ?」

「何がいけないの!」

「だから、なんなんだよ」

見下すように私を見下ろす目。
涙がこぼれて歪んで見える。

パーカーを掴んで、立ち上がった。
両足に力を入れる。

もう、転んでしまわないように。

「何がいけないの?友達が欲しいって願っちゃいけないの?このクラスで真翔は初めて友達になってくれた。優しくしてくれた人を大事にすることの何がいけないのよ!」

「それがウザいって言ってんの。あんたはたまたま声をかけられただけ。たった一回のラッキーにすがってるだけじゃん」

「あなた達にだって権利はあるよ。真翔は誰かの所有物なんかじゃない。そんなに真翔に近付きたいならなんでそうなれるように振る舞わないの?なんで私や武田さんのせいにするの?」

「誰もりいさのせいになんか…!」

「武田さんのほうがずっとずっと誠意があるよ!私にしたことは酷いって思った。でも武田さんは真翔に対して真っ直ぐだった!正直だった!あなた達は自分の憂さ晴らしがしたいだけの、ただの陰湿だよ!」

「はー、ほんとウザい。もーいいや。真翔、真翔ってほんっと耳障りだし。あ、そうだ!今からこいつ教室に連れてってさ、みんなにこの腕見てもらおうよ」

私の左手を持ち上げて、傷をマジマジと見てから、ゴミみたいに放り投げられる。

「みんな、なんて言うかなー?もう誰も友達になってくれないんじゃない?だってあんただって“隠したいこと”って自覚あるんでしょ?」

「っ…」

一人の女子がスマホをポケットから取り出した。

カメラカメラーって歌うみたいに言う。
写真を撮って、みんなに回すのかもしれない。

真翔。ごめん。
私の為に考えてくれたこと、もう意味無くなっちゃった。