「何…って…友達、だよ…?」

「ただの友達ぃー?」

「ただの…?」

「小高くんのこと、特別って思ってるっしょ」

「私達さ、りいさだから我慢してんだよ?本当はみーんな、小高くんと仲良くなりたいの。でもりいさが小高くんのこと大好きだからさ。りいさだったらしょーがないかって。でもいきなり出てきたあんたみたいな奴がちょっと優しくされたからって調子乗ってんの見るの、胸糞悪いんだよね」

女子達が私を責め続ける。

要するに、「小高くんはりいさの物だから手を出すな。私達だって我慢してんだから」ってことらしい。

ちょっと前の私だったら、ごめんなさいって震える声で謝って、今後一切関わりませんって約束でもして、金輪際、真翔にも無視をキメ込んだかもしれない。

でも、今は違う。
私にだって、自分の大切な物を守る権利はある。
真翔は誰かの所有物なんかじゃない。

他人に決められる筋合いは無い。

「嫌だよ」

「は?」

「調子に乗ってるとか、私にはちょっと分かんない。あなた達が言うように、真翔は特別だよ?特別に決まってんじゃん」

「は、何…」

「特別に決まってるでしょ!真翔だけが私をちゃんと見てくれた!私の存在を否定しないで向き合ってくれた!私の声をちゃんと聞いてくれたのは真翔だけだった。進藤さんだってそうだよ。ちゃんと私の話を聞いてくれたの。ずっとずっと一人で、怖くて、悪意の矛先を向けられて…。そんな中から救ってくれたの。特別に決まってるでしょ!」

「じゃああんた、りいさにどうされたって知らないからね!?」

「それは武田さんが決めることだよ。武田さんが私をどうしても許せなくて、どうにかしようって言うんなら私だって武田さんとちゃんと向き合うよ。理由は分かんないけど、武田さんが真翔を必要としてることは伝わるから。でも私にも真翔が必要なの。それに…、誰と一緒に居るか…決めるのも真翔だから…」

「綺麗事ばっか言いやがって…!」

私に水をかけた女子が、私の髪を掴む。
あとの二人がパーカーのフードと私の肩を掴む。

羽交いじめにするつもりだったのかもしれない。
その前にフードを掴まれた拍子に、パーカーが肩から抜けて、二の腕の半分くらいまで脱げた。

メンズサイズのパーカーは、私にはちょっと大きかった。
腕周りも大きくて、二の腕まで脱げた裾の隙間から、それより下の腕も見えた。