翌日、真翔に貰ったパーカーを羽織って登校した。

これは真翔がくれたお守りみたいな物だから。
不思議となんだって出来る気がした。

学校に着いて、自分の下駄箱のフタを上げた。

「何、コレ」

上靴に立てかけるようにして、一枚のカードが入ってる。

「視聴覚室の隣の教室に来て…?」

カードに書いてる文字を読む。
その下には「真翔」って書いてある。

真翔の下駄箱のフタをそっと上げてみる。
確かにもう登校している。

ていうかクラスのほとんどの人が登校してる。
だってあと十分で朝礼が始まるし、なんなら遅刻ギリギリだった。

私はいつもギリギリにしか登校しない。
早めに登校したってお喋りする相手なんて居ないし、自己防衛の一つだった。

早くしないと遅刻してしまうのに、私の足は視聴覚室のほうへと向かっていた。

目的を持って設けられてる教室にはそれぞれ鍵が掛かっているけれど、空き教室には鍵が掛かっていないことを、誰もが知ってた。

真翔はなんでわざわざこんな所に呼び出すんだろう。
私が遅めに登校してくることも知ってるはずなのに。

これ、本当に真翔の字かな。
ちょっと勘ぐって、まじまじと見てみたけれど、真翔の字をはっきりとは憶えてない。

視聴覚室は、教室とは別校舎にある。
音楽室とか美術室とか、演劇部の部室とか、そういう教室が集まった校舎だ。

視聴覚室のある三階に上る。
その隣の教室。

廊下から見たら、中は真っ暗で何も見えない。
電気が点いてない暗さじゃなくて、暗幕の黒だ。

視聴覚室での授業が違う学年と被った時はこの教室も使うことがあって、一応ここにも暗幕が用意されている。