「リコのせいじゃない」

「まつり」

「リコのせいなわけないじゃん。これは私の問題で、私が弱かったんだよ。多分、一年の時からリコ達に甘えてたんだね、私。だから二年になって一人になって、明るく振る舞うことも勇気を出すこともいくらでも出来たはずなのに、それが出来なかった」

「急に変わるなんて無理だよ。誰だって怖いよ」

やっぱりリコは優しい。
いつだって私を否定しないでいてくれる。
「変わらない」リコが嬉しかった。

「本当はね、最初はやっぱり寂しかった。遠足の時もね、どこかで期待してたの。リコ達が迎えにきてくれるんじゃないかって。それが私の甘えだって気付いてれば、もっと早く変われたかもしれないのに」

「変わりたいの?」

「うん。私、変わりたい。目の前の地獄に怯えて、人のせいにばっかりしてメソメソ生きていくのはもう嫌だよ。今日、分かったの。悔しかった。なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだろうって思った。でも周りに解って欲しいなら私が変わらなきゃだめだよね。向き合うのって怖いけど、本当はまだ逃げたい気持ちのほうが強いけど、私…変わりたい!」

「そっか」

リコがクリーニング屋さんの軒下から一歩出た。
陽が沈み始めている。
夕日がリコをオレンジ色に染める。

「友達だよね?」

「友達?」

「まつりと私。まだ戻れるよね」

喉の奥から泣き出しそうな感覚が込み上げてくる。

「戻れる…とかじゃないよ。私達、壊れてなんかないもん!」

「うん!まつり、また一緒に帰ろうね」

リコ、ありがとう。
私は多分、だいじょうぶ。

リコに今日もらった勇気を忘れない。
絶対に願いを叶えてみせる。

生きたいと思える世界を、
死にたいなんて二度と思わなくていい世界を、
私は絶対に手に入れるから。

「一緒に帰ろう。カラオケも、カフェにも行こう。約束だよ」

リコは、うんって頷いて、私の大好きな顔で笑った。