ずっとカーテンが閉まってたし、全然気付いてなかった。

いつから私だって気付いてたんだろう。

「体調悪かったの?」

「朝からちょっとお腹痛くて。うちのクラス、一時間目が体育だったんだよね」

「そっか。それはキツイよね」

「うん。それで休ませてもらってたんだけど、終わるくらいの時に誰かが入ってくる音がして。保健の先生は寝てる子が居るからって気遣ってくれてたけど、ほんとは別にそんなに眠っては無かったんだよね」

「そうだったんだね」

じゃあ最初から全部、リコに私達の会話が聞こえてたんだ。

「友達…?が、九条さんって言った時、まつりのことだってすぐに分かった。うちの学年で九条って他に聞いたこと無かったし」

「うん」

「まつり…、イジメ…られてるの?」

リコが立ち止まった。
クリーニング屋さんの軒下。

影が出来ていて、影に入ったら少し涼しい。

木曜定休日の貼り紙。
自動ドアには内側からスクリーンロールカーテンが垂れていて、隙間から中を覗いても真っ暗だった。

「イジメ…になるのかなぁ…」

「どんなことされてるの…」

「無視?されたり、休み時間に一人だったり。後ろの席の小高真翔…あ、ほら。一年の時から人気で有名だったじゃない?その人が気にかけてくれたんだけど、理由は分かんないけど真翔のことすごく慕ってる子が居て。それで…でもその子はね、リコにも聞こえてたかもしれないけど、保健室で謝ってくれたの!だから…そんな大したことじゃないよ…」

「大したことないわけない」

「リコ?」

「休み時間にずっと一人ってだけでも悲しいよ。まつりは苦しかったんでしょ?だったらまつりがそれを誤魔化しちゃだめじゃん」

「リコ…」

「まつり、傷付くって言ってた。死にたくなるって言ってた。クラスが変わって私は自分の生活が大事で…まつりのこと蔑ろにしてたよね。ずっと一人ぼっちだったんだよね…。ごめんね。気付いてあげられなくて」

リコが私の手を握った。
両手で包まれた私の右手。

リコは何かにお祈りをするみたいに、私の手を握ったまま目を閉じて俯いている。