「リコ、もう帰るんでしょ?」

リコも鞄を持っていることを確認して聞いた。

「うん」

「じゃあ途中まで一緒に帰らない?」

「うん」

私のうちは徒歩圏内だけど、リコはバスに乗って来てる。
一年の時もバス停まで一緒に歩いて、途中でアイスとかコンビニのホットスナックを一緒に食べたりした。

お小遣いを全然貰えない時はその出費すらキツイ時があったけど、リコと、もう一人仲の良かった子と一緒に過ごす時間は、私の救いだった。

「久しぶりだね。一緒に帰るの」

校門を出て、リコが使ってるバス停までの道を歩いた。

自分のうちに帰る時とは反対方向だった。
でもバス停まで行けばそこからまたグルッと回ってアパートまで帰れるから二度手間では無い。
あの頃も、今もこうやって一緒に帰れることが嬉しかったから。

なんとなく元気が無いリコが気掛かりだったけど、リコが喋り出すまで待った。

リコは明るい子だった。
誰とでも仲良くなれるタイプで、グループとか属さなくてもどこでもやっていけるタイプの子だ。

入学式の日、一年生の下駄箱がどこか分かんなくて迷ってた私に声をかけてくれたのがリコだった。

「あのね、まつり」

「うん?」

「ごめん」

「え…?」

歩き続けたまま、突然謝るリコの顔を見た。

五月を過ぎた頃から陽が長くなって、下校時はいつも西陽が眩しい。

リコの顔も眩しくてあんまりちゃんと見えない。

「聞いちゃったの」

「何を?」

「一時間目が終わるくらいの時、保健室に居たでしょ」

「…」

「隣で寝てたの、私だったんだよ」

「そ…っか…」