「あなた達は?謝んなくていいの?」

「っ…なんなのよ!大袈裟なんだよ!ただの水じゃない!怪我したわけじゃ無いしほっとけば勝手に乾くでしょ!?いちいち面倒な奴!」

「ただの水なんかじゃない!」

プツン…って自分の中で何かが切れる音がした気がした。
気付いたら女子達に向かって叫んでいる自分がいた。

「ただの水なんかじゃないよ!私はすごく怖かった!あなたの机にアルコールランプが置いたままだったのも私を脅かそうとしたからだよね?あなた達にとったら…第三者からしたらただの水だよ…。でも私にとっては悪意そのもので、凶器に思えたし、怖かった。傷付いた。ねぇ…気付いてないかもしんないけど私だって一人の人間なんだよ…。当たり前に傷付くし死にたくもなる!みんなだってそうでしょ!?」

「本当にいい加減にしなさい!」

彼女達の答えを聞かないまま、飛んできた先生に強制退室させられてしまった。
隣のベッドがギシッて軋む音がした。

廊下に出て、女子が「大袈裟…」って言い捨てて、早足で行ってしまった。
武田さんは私を見たけれど何も言わなかった。

「はい」

ベッドの上に置いていた制服の存在を、私はすっかり忘れていたけれど、進藤さんが持ってきてくれていて、渡してくれた。

「ありがとう…」

「一人の人間だよね」

「え…?」

「九条さんも私も」

「うん…うん!」

進藤さんは笑っている。
何も解決していないけど。

届いたんだって思った。
誰か一人にだけでも。

あぁ、この人には私のことが見えるんだ。
ここに存在しているんだって思えて、私はちょっと泣いた。