「もー、なにー?」

カーテンを開けかけながら愚痴をこぼすこの声と口調。
はっきりと分かる。
私に水をかけた女子の声だ。

カーテンが開いて入ってきたのは、思った通り、あの女子と武田さん。
それから一緒の席に座っていたあと二人の女子。
みんな武田さんのグループだ。

「さすがにちゃんと謝っといたほうがいいと思って」

「何ー?しんちゃん、優等生気取り?」

「いや、そんなんじゃなくて。さすがにマズイでしょ。このままだったらあなた達だって困るんじゃない?」

「困るって何がー?」

「先生とか色々だよ。それにさすがにさ、やっていいことと悪いことくらい、分かるでしょ?」

「は?何、しんちゃんなんかウザいんだけど」

言われた女子は、顔を引き攣らせて、叱られた子どもみたいに反抗する。

正直、進藤さんが彼女達に謝罪を促してることが、有難いかどうか、今は判断出来ない。
やっぱり怖い気持ちのほうが強いし、後からもっと悪化するんじゃないかって思う。

でもこのままなんて嫌だって気持ちもあって、私がどんなに怖かったか、悲しかったか理解してもらう為には必要なんだってことも分かった。

「りいさ。しんちゃん、どうする?」

また、心臓が強く脈を打つ。
これってもしかして、進藤さんも標的にされちゃうのかも。

私のせいで…。

「やめ…」

「どうもしないよ」

私の声を遮って、武田さんが言った。

「え?りいさ?」

「どうもしないって言ってんの」