「着替え、終わった?」

「あ、うん…ごめんね、お待たせ」

進藤さんがカーテンを開けて入ってきた。

「大丈夫?」

「うん…」

「まぁ、大丈夫じゃないか」

進藤さんは言いながら、ベッドに座った。

「座ったら?」って言いながら促されたから隣に座った。

「進藤さん」

「うん?」

「なんで優しくしてくれるの」

「なんでって?」

ずっと俯いて自分の上靴の先ばっかり見ていたけど、顔を上げて進藤さんの顔を見た。
どこを見ているのか分からないけれど、カーテンで区切られた狭い空間に視線を泳がせてるみたいだった。

「私、進藤さんとは友達…じゃないと思うし…遠足の時だって仲良くなれなかった…」

「…友達ってなんだろうね」

「え?」

「よく分かんないよね。クラス替えの時にたまたま喋るタイミングがあって、流れでなんとなく一緒に居るようになったーとかさ、幼馴染で物心つく前から一緒だったとか。友達になろうってわざわざ宣言してなってる人のほうが少ないと思うし」

「うん…。でも私にはそんな風に思える友達もいない。一年の時に仲良かった子ともすっかり疎遠だし。クラスの誰とも仲良くない。進藤さんがなんで親切にしてくれたかも分かんないんだよ…」

進藤さんが鼻だけで息を吐いた。
いらいらしてるとかじゃなくて、力を抜くみたいな感じ。

「私だって分かんないよ」

「え?」

「多分、別に意味なんてない。使ってた物が物だけにびっくりしただけ。だからさ、今日の理科の授業が早速役に立ったってことじゃない?」

軽く笑う進藤さんにつられて私もちょっと笑った。

コンコンって保健室のドアをノックする音が聞こえた。

「来たかな」

呼んどいたって言いながら、進藤さんは私の前でスマホを振った。
ドクンッて心臓が高鳴った。

嫌な予感がした。