「九条?どうした?」

先生が近寄ってきて、「立てるか?」って顔を覗き込んでくる。

「わた…私…なに…?なんか…液体…」

「液体?」

角の女子が「ごめんなさーい」ってゆるい口調で声を上げた。

「さっき使ってたビーカーに水が残ったままでー、捨てようって思ったら手が滑っちゃったんです。そこに九条さんがちょうど来ちゃってぇー」

「お前なぁ…気をつけろよ。水で良かったけど、あとランプ、返し忘れてるぞ!」

「あー、本当だぁ」

女子は軽く謝って、アルコールランプを教卓の前に持っていった。

「なんだー」とか「びっくりした」って口々に言う生徒達。

武田さんはつまんなそうな顔でこっちを見てた。

「九条、お前とりあえず保健室行って着替えてこい」

「ついていきます」

進藤さんが私を立ち上がらせる。

自分のグループの席を通る時、真翔の顔は見れなかった。

惨めだった。