授業が終わる頃だった。

全員手を洗うように先生が言って、順番に理科室の水道で手を洗った。

水道の一番近くの席に、武田さんのグループが座っている。

その中でも一番近い、角の椅子に座っている女子の前にアルコールランプが置いたままだった。

もうみんな教卓前に返してるのに。
返し忘れたのかな。

そんなことを思いながら、水道に近付いた。
蛇口を捻ろうとした時だった。

バシャッて、私の制服、脇腹の所に液体が飛んできて、それがじんわりと中に着たキャミソールまで染み込んでいくのが分かった。

「キャッ…!」

驚いて咄嗟に横に飛び跳ねて、隣の蛇口で手を洗っていた女子にぶつかった。

アルコール…?
やだ…どうしよう…

「ゃ…」

しゃがんで頭を抱えてしまった私に、誰かが駆け寄った。

先生が「どうした!」って教卓のほうから叫んでる。

ザワザワした理科室。

「なに?」

「さぁ…」

「え、九条さん…?」

「なになに!?」

色んな声がする。
笑ってる声もする。

ゆっくり顔を上げたら、角の席の女子がおかしそうな表情でこっちを見てる。

机の上にはちゃんとアルコールランプがあった。

私の傍で一緒にしゃがんで「大丈夫?」って言ってるのは、進藤さんだった。