今日も武田さんへのおはようミッションは失敗。
十二位だし仕方ない。

一時間目は理科。
理科実験室で、アルコールランプの授業って、教室の後ろ、一日の時間割と内容を書く黒板に書いてある。

前回の授業の終わりに、実験をするわけじゃないって科学の先生が言っていた。

火を扱うことの危険性、注意するべきことの講習みたいなものだって。

朝礼が終わって、みんなが理科室に移動を始めた。
私は相変わらず一人で、みんなの後ろからとぼとぼ行くのも嫌だったから早めに行きたかったのにちょっと出遅れてしまった。

「まつり!」

真翔が私を呼ぶ。
席の周りにはいつも通り、真翔の友達たち。

「これ、持ってってくんない?」

これ、って言いながら、自分の教科書とか筆箱を私に差し出した。

「え?」

「俺、今日日直なんだよね。授業前に理科室に備品運べって言われててさー」

友達たちが、なんだそれーって言い合っている。

理科室には鍵付きの扉が無くて、生徒がアルコールランプとか薬品とか、勝手に使わないように、違う教室を理科準備室として使っている。

今日、日直の真翔が準備する係に選ばれたらしい。

「てか俺一人じゃ持てねーわ」

「じゃあ俺も行く」

「二人でイケんの?一応俺も行くわ」

友達が言いながら、ぽい、ぽいって自分達の教科書を机に置いていく。

「え、え…」

「俺、こいつの持ってくからさ、九条さんは真翔のとー、あとこいつの持って」

「え…うん…!分かった」

「お前らちゃんとまつりのこと連れてけよ!」

「あはは!過保護!」

「行こ、行こ」

え…これ、ついていっていいってこと?
理科室くらい一人で行ける。
でも、いいのかな。

真翔の顔を見たら、笑って「早く早く」って、手で向こうに誘導された。

頷いて、小走りで真翔の友達たちに近付いた。

変な感じがする。
体がむず痒い。

二年生になって、初めて誰かと移動教室をした。
今日が十二位なんて、信じられない。