「まつりに初めて声をかけた日、絶望した母さんの影を見た気がした。未来なんか見えない…どこに居てもちゃんと息が出来ない…あの頃の俺を見てるみたいだった。気付いたらまつりから目が離せなくなってたんだ」

「そうだったんだね…」

「最初は自分を救いたかったのかもしれない。もう一度誰かの心を救えたら、俺は生きててもいいんだって思えるかもしれないって。でも俺の前でまつりはいつもがむしゃらで、メソメソしてるくせに生きたいって強く思ってて。気付いたらまつりのことが好きになってた。まつりの強さに救われたのは俺のほうだった。まつり、本当にまつりのことが好きだよ。だから知られたくなかった。もうおしまい」

「おしまいって何…?」

「おしまいだよ」

「分かんないよ!」

「まつり、好きだよ」

「真翔!?」

電話が切れた音。
真翔の名前を呼び続けても、画面にはもう通話中の文字はどこにも無いのに、真翔の名前を呼んだ。

掛け直しても、真翔はもう出なかった。

怖かった。
手が震えてスマホもうまく握れない。