「そんなこと考えながら生きてたらさ、もう全部がバカらしくなって、何で自分だけこんな思いしなきゃいけないんだよって卑屈な感情しか湧かなくなった」

「うん…そうだよね…」

「誰かを酷く傷付けてみたくなった。好きでこの家系に生まれたわけじゃないのに、人形みたいに扱いやがってってさ。お前ら全員絶望に堕ちろって思った」

「真翔…」

「だから俺はS高の入試日、会場に行かなかった。本当はもう俺には無理だって分かってたから恐ろしくて、会場に向かう駅のトイレで吐いて、目の前が真っ暗で動けなくて。カッコ悪いよな。それからは簡単に想像出来たけど、父さんは俺の人格も存在も否定した。お前だけが俺の恥だってさ。案の定、母さんも俺の味方なんてしてくれなくて、父さんの言う通りだって。どうやって償うんだって。だからもう全員消えちゃえって思ったんだ。お前ら全員要らないって」

真翔が話してくれたことを、彼が背負って生きていくには、私達はあまりにも子どもだった。

真翔の秘密は重たくて、未来を消せるほどの暗い闇だった。