「りいさにもう聞いた?中学の時のこと」

「うん…」

「俺さ、りいさを助けたことによって自分を正当化したかったんだろうな。自分の存在価値を認めて欲しかった。S高に行けない落ちこぼれの俺は、あの家族の中では無意味だったと思う」

「武田さんは真翔のこと本当に慕ってるよ。真翔のおかげで今も生きていけるって…」

「買い被りだよ」

武田さんが話してくれた、私が出会った頃に感じた、キラキラした真翔の気配はどこにも見当たらなかった。

「仮にS高に行けたとしても、自分で選んだわけじゃない未来に俺はどこまで食らいついていけるか分からなかったんだ。自分の度量は自分が一番知ってて、“凄い人間”にずっと食らい続けて、振り落とされないように必死でしがみついていく。何年も何年も、死ぬまでずっと。教科書を開いても、ベッドの中で目を閉じても、そんなことばっかりが脳内を支配した。教科書に並ぶ文字が、記号が、鎖みたいに思考をがんじがらめにした。俺はおかしくなってた。死にたかった」

「嫌だよ真翔…そんなこと…」

死んでほしくないなんて私が言っても、きっとなんの説得力も無い。

そんな言葉しか言えない自分が情けない。