「とうちゃーく。開けるから待って」

真翔がポケットから鍵を取り出した。
小さいクマのチャームが付いてる。
真翔っぽくなかった。

ていうか、やっぱりこの家なの…。
私の目の前には豪邸が立ちはだかっている。

うちのアパートに比べたらこんなのは城だ。

「ちょ…ちょっと待って、おうち、コレ?」

「そうだけど、どうした?」

「え、コレが人の家…そっか…賃貸…ではない?」

真翔がくすくすとおかしそうに笑った。

「変なまつり。父さんの家だよ」

「へ、へぇー…。お父さん、お金持ちなんだね」

感情がついていけなくて、不躾なことをそのまま言葉にしてしまった。

真翔は楽しそうに笑って「父さんは、そうかも。医者だからかな。俺がお金持ちなわけじゃないから安心して」って言って、私の手を引いた。