月曜日。

可愛い服なんて持ってないから、
今日もいつもと変わらない、シンプルな軽装。
これならまだ制服のほうが可愛いかもしれないって思えてくる。

そうだ。次の休みには真翔と洋服を見にいくのもいいかもしれない。
真翔の好みも分かるし。

そんなことを考えてたら、私を呼ぶ声がして、遠くから真翔が走ってきた。

「お待たせ」

「ううん。今日もありがと。二度手間になっちゃうのにこんなとこまで迎えに来てくれて」

「いいんだって。まだ早いし、ゆっくり歩いてこ」

「うん」

まだ十時になったばっかりだった。
昨日の夜、電話でなるべく長く居たいから早めに待ち合わせしようって真翔が言った。

真翔は、私の誕生日の日から、なんだかすごく気持ちを言葉にしてくれることが多くなった。

人の目ばかり気にしてた私にとっては、真翔の感情がよく分かって安心出来たけど、ちょっと照れ臭い感じもする。

「ねぇ、真翔」

「なぁに?」

「今度さ、服とか見に行かない?」

「服?いいよ。欲しい服あんの?」

「いや、欲しい服があるっていうか、服が欲しいっていうか…」

「あはは。何それ」

「ほら私ってこういうシンプルな服しか持ってないからさ。綺麗な女性らしい服もあったほうがいいかな…って」


真翔が私のパーカーのフードを直した。
「いつも裏返ってる」って笑った。

「何を着ててもまつりがまつりじゃなくなるわけじゃないからだいじょうぶだよ」

「んー…」

「あ、誤解しないでね?服とかアクセサリーとか靴とかさ、それ一個新しくするだけですごく気分が変わるじゃん。楽しい気分になるし、自分が変われた気分になる。そういうの、俺好きなんだ。だからまつりがそうしたいなら付き合うけど、俺はまつりが何を着ててもまつりのことは変わらず好きだよってこと」

「…もう、またそういうこと言う」

「だめ?」

「だめじゃないけど…」

歩きながらだんだんと見慣れてる景色が変わっていく。
歩いたことのない路地を何本か通った。

見たことの無いお店。
知らない人達の顔。
遊んだこと無い公園。

私の住んでる町じゃないって実感した。

さっきから、どこの家よりもちょっと高い屋根…屋根って言うのかな。
洋風の屋敷みたいな…なんだ?
チラチラと視界に入り始めていて、あの家だったらどうしよう。あんな家連れていかれたら社交界じゃん…なんてくだらないことを考えていた。