「なんで九条さんなのって何度も思ったよ。私と九条さん、条件は同じなのにって。でも人を好きになるのって頭で考えることじゃないから。理由を言葉に出来ることばっかりじゃないから。真翔の幸せが私の幸せ。真翔だってそれは思ってくれてると思う。だから九条さんがもし真翔を傷つけたら絶対に許さない。絶対に」

「うん。約束する」

「そうして」

「武田さん」

「何?」

「私と友達に…」

“なってください”って言葉を遮って武田さんはグラスを持って立ち上がった。

「生意気」

ドアを開けて出ていった武田さんが照れ隠しなのか本当の拒絶なのかは分からなかった。

でもまた一つ。
世界が変わった。
武田さんのことが分かった気がした。

これからの武田さんのことも知りたい、知って欲しいって思った。

また烏龍茶を取ってきた武田さんは一気に飲み干して、鞄を取った。

「そろそろ行こっか。今日はゆっくり寝るのよ」

「うん!」