「私さ、九条さんに言っておこうって思って来たのよ」

「うん」

「私は真翔が大好きだし今でも私のヒーローだけど、あんた達の関係にもうとやかくは言わない。九条さんを選ぶことが真翔の幸せなら。でもね、私が真翔を好きでいることは私の自由だし、それが私の幸せだから。その気持ちを無理矢理消すつもりは無い。いつか自然と忘れられる日が来るならそれもいいかもなって思うけど。今は無理だから。それは分かってて」

「分かってる。私だって真翔がずっと傍に居てくれるなんて自分を過信したりしない。いっぱい努力するよ。武田さんにもいつか本当に認めてもらう為にも。私も、真翔が本当に好きだから」

「うるさい」

武田さんは俯いて、組んでいた足をブラブラさせた。

「武田さん、教えて」

「何をー」

俯いたまま、武田さんはゆるふわに巻いた髪の毛を掻き上げた。


「武田さんが隠してること」

「は?何、隠してることって」

「真翔との間に何があったの?二人はいつも共通の何かをお互いに見てる。なんで真翔は武田さんのヒーローなの?何があったの?」

「ほんっと、オドオドした地味子だったくせに、よく喋るようになったと思ったらウザイ。あんたがそんなこと知ってなんになるの」

「私もそう思ってた。武田さんに関わらなきゃいけないくらいなら知りたくないって。過去に何があったとしてもそれは真翔と武田さんの問題で、私には関係無いから何も言ってこないでって…。でも今は違う。自分の生きてる世界が苦しくて、もう嫌だって思うのなら、変わりたいって思うのなら、怖いことから逃げちゃだめだって思ったの。あなたのことを知りたい。私が…あなたの傷を癒せるなら…」

「ドラマの見過ぎじゃない?」って言って、九条さんは顔を上げた。