「開けていい?」

「もちろん」

薄い水色の箱。

そう言えば、あの理科室での事件の日。
私の十二星座占いは十二位だった。
ラッキーカラーは水色。

あの日、保健室の窓から見た空はこの箱みたいに薄い水色だった。

今日の私はきっと一位。
ラッキーカラーはまた水色だと思う。
ママとのことも真翔が帳消しにしてくれた。

リボンを解く。
箱のフタをゆっくり開けたら、中には綺麗なブレスレットが収まっていた。

「綺麗…」

ピンクゴールドで、他にチャームや石が付いてるわけではないシンプルな物。
大人っぽくて、すごく素敵だった。

「貸して」

真翔が私の左の手首に着けてくれた。
体育館から漏れる灯りでキラキラと瞬いた。

「本当に綺麗…」

「似合ってるよ」

「本当に?」

「本当に。ちょっとは左手も好きになれそう?」

真翔がそんなことまで考えて、一生懸命選んでくれたブレスレット。
真翔はいつも私が泣かないでいいように、いくつもいくつもお守りをくれるんだ。

「好きになりたい。なれると思う」

「うん。きっとなれるよ」

ニコッて真翔に笑って見せた。
きっと上手に笑えたと思う。

「まつり、あのさ…」

「うん」

「好きだよ」

「うん。私も大好き」

「…友達として?」

「ううん」

「…どういう意味で?」

「内緒」

「内緒かー」

真翔が私の髪に触れる。

真翔の香りが強くなる。

キスをされたのはきっと勘違いじゃない。

私も真翔も正解を言わないでズルい。
でも真翔と同罪ならズルいままでいい。

ここに居て。
何処にも行かないで。

言葉にしないまま、
壊れないで済む方法を私達はいくつも繋ぎ合わせる。

曖昧でズルい選択だとしても。

この人が居てくれるなら、それでいいと思った。
真翔も同じ気持ちだって信じられたから。