「千佳さんは父さんの妹なんだ。ここの若女将だよ」


 なるほど。この気品はそういうことか。

 それにしてもきれいな人だ。おっとり顔の結弦と対照的な少し切れ長の目が、大和撫子を彷彿とさせる。


「ごはんは釜ごと置いておくわ。たくさんあるから大丈夫だと思うけど、足りなかったら言ってね。それじゃあ、ごゆっくり」


 その優雅な動作はひとつひとつの動きがまるで芸術のようで、わたしと美輝はその姿に思わず見とれてしまっていた。


 小鉢の盛り合わせが数品と茶碗蒸し、炙って食べる特産品の牛肉とお野菜、盛りだくさんのお刺身に焼き魚、揚げ物にはこの辺りで採れたという野草や、大きな海老の天ぷらまで揚げたてで用意してくれた。

 それに釜で炊いたご飯にお吸い物までどれもとてもおいしくて、わたし達はしょうもないやりとりで笑いながら、用意された料理を存分に味わった。

 遅い時間に昼食を摂ったので胃袋の空きに不安もあったけれど、結弦と怜はお釜が空っぽになるほどの食欲で、わたしもこっそりとおかわりして、美輝も茶碗に三杯おかわりしていた。