「ごゆっくりどうぞ」


 そのままガラス扉からテラスへと移動した店員さんは、どこからか集まった鳥達に餌を与えている。

 みんなの分が揃ったことを確認して、各々が運ばれてきた料理に口をつけていく。


「うわ、おいしっ! なにこれどうやって作ってんの!」


 美輝がオムカレーを絶賛しているのを見て、なぜかわたしまで嬉しくなった。

 大喜びの美輝を横目に、わたしもオムカレーを口に運ぶ。

 ふわふわの半熟たまごとカレールー、それらをチキンライスに絡めて食べると、とろけるようなたまごの甘みと、少し酸味のあるほどよいカレーの辛さが、口いっぱいに広がる。

 幸せの味、そんな敬称が似合う優しい味わいだった。


 でも……この味、知ってる。


 最近食べたよね。

 一体どこで?

 いくら既視感とはいえ、味まで覚えがあるものだろうか。

 もしかして前世の記憶ってやつなの?

 いずれにせよ、一度体験した人生をトレースしてるみたいで気味が悪い。

 だけど今そんなことを口にして、みんなの楽しい時間を台無しにしたくない。

 そう考えたわたしは、口をつぐんで食事を続けた。