「いらっしゃいませ」
店内に入ると、わたし達と同年代くらいの女の子が出迎えてくれた。艶やかな黒髪に鼻筋がすらっととおっていて、大人っぽい印象のとてもきれいな店員さんだ。
「四名様ですか? お好きな席へどうぞ」
四人がけのテーブル席へ座り店内を見渡していると、店員さんがすぐにお水を持ってきてくれた。
店員さんにも店の内装にも、やっぱり見覚えがある。
でも変だな。昔の記憶だとしたら、同い年くらいの店員さんに見覚えなんてあるはずがない。だとすると雑誌かなにかで見たモデルさんにでも似ていたのだろうか。
昼食時を大幅に過ぎてお腹も空いていたので、それ以上は気に留めず、隣で美輝が開いたメニューを横から覗き込んだ。
「琴音、なににする? オムライスもいいけどカレーも捨て難いよね。あぁ、悩むぅ……」
「それならオムカレーがあるから、それにしない?」
「オムカレー? どこにそんな……」
美輝がメニューをぱらぱらとめくって表紙に戻すと、カレーがかかったオムライスの写真が載せられていて、そこには小さくおすすめと書かれていた。
「ほんとだ。いつの間に見つけたの?」
そういえば、内装や店員さんに気を取られていてメニューは一度も見ていない。
「メニューまで覚えているんなら、よっぽどおいしいんじゃないか?」
結弦がメニューを目で追いながら「ふふっ」と笑みをこぼす。これじゃ、わたしが食いしん坊みたいで、なんだか恥ずかしい。
「わたしオムカレーにしようっと」
「俺はカツカレーにするかな」
美輝に続いて怜も決まったようだ。
「じゃあ、俺はオムライスのカツ乗せ。琴音はどうする?」
「あ、わたしも美輝と同じ。オムカレーにする」
全員決まったところで、結弦が「すみません」と店員さんに声をかけた。