――なぜだろう、なんだか懐かしい。


 晴れ渡る空の下、蝉が生きた証を残そうと必死に叫んでいる。

 そんな当たり前のことなんて、普段は気にも留めないだろう。

 今この瞬間をみんなで生きて、共に笑い合えることは、当たり前かもしれないけれど、わたしにとっては特別だ。

 夢だったとか、時間が戻ったとか、考えたってわからない。

 わからないなら、それでいい。

 結弦が無事で、美輝と怜も生きている『今』は、まぎれもない現実だから。

 孤独と絶望に胸が締めつけられていた日々。

 夢だったのかもしれないけれど、あれは、甘えてばかりのわたしに神様がこっそり与えた試練だったのかもしれない。

 今度こそ強く生きよう。

 この気持ちと、いつもわたしに笑顔をくれる、みんなのことを大切にしよう。

 何事もなかったかのように笑う三人を見ていると、涙が浮かんでくる。

 それを誰にも気づかれないように、空を仰いで笑い続けた。