幾分落ち着きを取り戻したわたしは、思考をしばらく停止させて、ぼーっと窓の外を眺めていた。
「そうだ、琴音! わたしお菓子持ってきたんだ! 一緒に食べよ!」
美輝がカバンからスティック状のチョコ菓子を取り出した。封を開けると、そこから数本手につまんで、「はいっ」とわたしに差し出してくれる。
「ありがとう……」
なんだかこのお菓子にも、見覚えがあるのだけれど……。
美輝から手渡されたチョコ菓子を口に運び、ふたりでポリポリとした食感を楽しむ。
少しほろ苦い味わいはカカオが多く入っているからだろう。
それでも、チョコの甘さはわたしの緊張を心なしか和らげてくれる。
だけどお菓子に見覚えはあっても、これを食べた記憶はない。
やはり事故の記憶は夢だったのだろうか?